気分の病気で少し。覚え書き。

投稿日:2015年6月12日|カテゴリ:コラム

当院において、患者さんはうつ状態で困っている方が多く来院します。

それまでの経過や発症状況などをうかがい、病前性格を把握したり、検査を行うことで器質性であることを除外したりします。笠原や木村という精神科医の名を冠したうつの分類があるのですが、それをもとに本当のうつ病を診断し、その後は、抗うつ療法をすすめていきます。治療の方向性は明瞭です。重症の場合は入院していただくこともありえます。

古典的な躁うつ病、今でいう双極性障害1型は最近あまり目にしませんが、錯乱した躁状態で、ご家族とともに来院されたりします。私も急いで、気分の安定化剤と強力な精神安定剤を最大量で内服してもらいますが、たいてい症状の進行に薬の効果が追いつかず、結果的には入院となる可能性があります。

最近では、双極性感情障害2型というのが頻繁にトピックになります。講習会やシンポジウム、医療情報誌からの情報などでテーマになっていることがよくあります。うつ状態と軽い躁状態を繰り返します。たった一回でも軽い躁状態エピソードがあればそのように診断されます。治療としては、簡単に言えば、気分の波を安定させればいいということになります。お薬では、気分安定化剤として、バルプロ酸、カルバマゼピン、リチウム、ラモトリギン、強力安定剤では、オランザピン、アリピプラゾール、クレチアピンという薬を使います。軽い躁状態を普通の状態に抑えていくことは比較的やり易いですが、躁うつの波の中で生じるうつ状態を中庸な状態に安定させることはなかなかうまくいきません。以前、文献等の処方を参考にしたこともありましたが効果的でありませんでした。最近では副作用に注意しつつラモトリギンという薬を使うようにしています。これもすごく効果的だという印象はないですけれど。仕方なく抗うつ剤を使うこともあります。ただ、抗うつ剤で感情の波が乱れてしまうことがあり、いつも使えるわけではないのです。一剤だけで躁とうつの波が安定すればよいですが、そういうケースはかなり幸運なほうで、たいていは例えばリチウムとラモトリギンの2剤で安定できればいいかなあ、と思っています。

双極性感情障害2型は、うつ病とも双極性1型とも異なる病気であるのですが、治療の上でも、たとえば性格の障害の人や不安の強い人などで情動性の起伏がある人なども2型に分類されていたとして、治療がスムーズに進み、薬物療法に限定しても薬が効果的であれば「なるほどその通り」と思います。けれど、うまくいかないことも多いし、十把ひとからげに双極性2型のカテゴリーの中に入ってしまっている感じがしてなりません。